砂の器
松本清張原作、野村芳太郎監督『砂の器』(1974)。
当時中学生だった私は、この映画をなんとつまらない映画だと思いました。倒叙ものでもないのに犯人が最初からわかっていて、単に捜査の過程をだらだらと描いているだけの退屈な映画です(あくまで当時の感想ですw)。
あれから四半世紀(笑)。今になって原作を読んで、DVD借りて映画を観直して…。あぁ、なるほど、こういう映画だったんだと気づきました(汗)。原作は長編で、犯人が誰かは最初からはわからない普通の推理小説です。面白くて一気に読んでしまったのですが、まぁ、残念ながら松本清張の中でもそれほどずば抜けて傑作というほどのものではないのではないかと思います。主人公の今西刑事の日本各地に出張した足を使った地道な捜査はほぼ全部空ぶり。それなのに重要人物が近所に居たり、親族のアパートに住んでいたりと、肝心なところはほとんどたまたまの偶然ばっかりでちょっと興醒めっぽい展開です。二人目からの殺害方法もちょっとどうなんでしょう…って感じで、ガリレオの湯川准教授なら短編で解決するのに良い程度のものですが、当時でも長編でこれは厳しいでしょう。
その点、この映画は原作の弱いところを上手に脚色してあって感心しました。殺人も最初のひとりだけにしたは無理がなくて良かったですし、「え~」と思った列車からの紙ふぶきもこの展開なら原作より不自然さが少ないです。犯人の音楽も現代音楽からクラッシックに変更したもの感動しやすくて見事です。なるほど良い脚本だと感心しました。
原作では単に犯行動機の理由説明だった犯人の不幸な生い立ちを、説得力のある感動のシーンにした素晴らしい映像、演出、そして加藤嘉の演技は涙を誘います。刑事役の丹波哲郎もぐっと抑えた演技で良いです。だた、原作では自分勝手で卑劣な犯人だったのが、同情すべき過去を前面に出したために加藤剛の演じる犯人の人間像が中途半端になってしまったのは残念に思いました。
しかし、この映画、今この年になって観直して良かったです。映画の印象や感想は観た時によって随分と違うものだなぁとつくづく思いました。
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